「君にサンセイケンをあげよう。政治に参加できるぞ」
僕は小躍りして喜んだ。
これで馬鹿で無能で無責任な政治家に反対票を投じることができる。
僕は勇んで議事堂に向かった。
議場では議員が白熱した議論をしていた。
折しも、議題は環太平洋パートナーシップという船を買うかどうかという議論だった。しかし、買ったあとの維持費の予算の話がない。これはダメだ。
俺はこの議案反対を決めた。
何しろ俺には参政権があるから一票を投じる権利があるはずだ。
俺は反対に投票しようとした。
「おっと君は反対に投票できないよ」
「なぜですか」
「君の権利は賛成権だからね。反対権は持っていない」
(遠野秋彦・作 ©2016 TOHNO, Akihiko)